1年程前に1匹のメス猫がウチのマンションの周辺に居を構え、5匹の子猫を産んだ。うち1匹はライトグレーのとても美しいやつだったのだが、いつのまにかそいつだけ見なくなった。誰かが捕まえて持っていったのだろう。売られたのかもしれない。別にどうでもいい。
残った4匹は欠けることなくすくすく育っていった。野良猫らしく人に馴れず、媚びず、一定の距離を保っている。たまにゴミ置き場を漁って散らかしているようだが、少なくとも俺には直接の迷惑は掛けていない。管理人が掃除をすることになり気の毒だが、頻繁にあるわけでもない。管理人も怒っていないようだ。ならば別にどうでもいい。
4匹はもう十分に生育していて、いい加減親離れしていいほどなのだが、一向に去ろうとしない。それどころか、最近はうちのベランダに入り込んでいることがあったり、夜中にミャーミャーうるさい。人を怖がっていない。こうなると「どうでもいい」では済まされない。近所のおばちゃんに聞いた話では、隣りのマンションに住む水商売の姉ちゃんが、仕事終わりの早朝に餌を与えているらしい。なるほど、それが原因か。
余計なことをするなというのだ。野良猫には野良猫の生き方があるのだ。どうせ「かわいいし、かわいそうだし」とか言うのだろうが、偽善だ。猫のためにもならぬ。生まれたばかりの子猫ならともかく、ここまで自力で生きてきたのだ。世話をするなら飼え。飼う気がないなら放っておけ。