「ロン。」対面の彼は静かにそして控えめに手牌を倒した。続けて「リータンピンドラ1、ちっちー。」というセリフが出てきた。聞きなれない言い方だが、どうやら私の周りで言うところのメンタンピン1丁でナナナナ、つまり7700点のことらしい。確かに7はチーと読む。7・7で「ちっち」と呼ぶのだね。ふむ、そういう言い方もあるのか、と感心しつつ次局へ。
「ロン。」またアガりやがった。今度は何だ?と彼の発言を待つ。「ピンフ、ドラドラ。サンキューです。」 …はぁ?サンキューてお前…と一瞬固まったが、少しおいてわかった。子のピンフ・ドラ2丁ならば3900点、いわゆるザンクだ。それを彼の地元では「サンキュー」と略すようだ。色々な言い方があるものだなとは思ったが、彼とトップを競っている私は次のオーラスに集中することにした。
そのオーラス、早々に親の彼がリーチをかけてきた。直後の光景は今でも覚えている。即で切った發。単騎待ち。振ってしまった。牌を倒しながら彼が言う。「リーチ一発。サンキューです。」 うががああああああ!キレた。リー即で3900、だからサンキュー、それはわかる。それはわかるが、慣れていない私にはうはは。即で振ってくれてアリガトね。うはうは。と聞こえたのだ。
それきり彼とは会う機会がなかったが、そのときのことはよく覚えている。そしてそれ以来、私も7700点のことを「ちっち」と略すようになった。但し「サンキュー」は使わない。使いたくない。